理事長挨拶

睡眠環境の充実がすこやかな眠りを支える

日本睡眠環境研究機構理事長 梶井宏修

日本睡眠環境研究機構が発足しました。睡眠環境研究機構設立の経緯及び今後の課題と展望を概説し、睡眠環境講座と日本睡眠環境研究機構の趣旨を述べる。

1.経緯

1) ふとんの性能評価方法のニーズに応えて

 日本睡眠環境学会は、JBA(全日本寝具寝装品協会)の依頼を受けて性能評価の確立のために設立された学会であります。

 1983年に、ふとんの規格体系調査委員会において、「ふとんは綿を側地に入れただけのものではない、ふとんの性能を説明できるようにしたい」 との要望で、JBAから依頼を受けて、これまでに、保温性試験機、弾力性試験機、水分移動特性試験機、耐久性試験機、形状測定器、高速乾燥器、等のふとんの性能試験機器を開発してきました。そして、ふとんの耐久性実用調査を実施して、睡眠環境シンポジウムを開催し、ふとんの性能評価方法、性能表示方法を策定してきました。

 そして、ふとんの性能試験機を活用できる技術者を育成するために、睡眠環境講座、睡眠環境フォーラムを開催し、寝具性能コンサルタントおよび睡眠環境コーディネーターを誕生させてきました。

 この目的は、ふとんの各種性能評価を理解する、実際の環境条件で適切な性能を維持できる状態を設計する、睡眠環境を実現させるなどの能力を習得する。物理的な性能測定および心理的・生理的影響の測定を行い、自ら問題点の発掘、開発のできる能力を身につけるためです。

 寝具の情報だけではなく、生理、心理、健康、安全に関わる、寝具の性能試験、睡眠環境の調査、改善方法の研究、人の行動に関わる寝室空間のデザイン等に精通した技術者の養成を目的としています。

 眠りの環境に関する多くの研究を行い、一人でも多くの人がその人にとって適切な眠りの環境を整え、活動時のパフォーマンスが向上することをめざして活動しています。その結果として、よい眠りを提供することで多くの人たちの幸せにつながることを願っています。

2) 睡眠環境研究所の設立

 寝具業界の各社が共同でふとんの性能試験機を利用できるように「日本睡眠環境研究所」を設立しました。

 最近では寝姿勢の測定、睡眠実験による寝具の評価を実施しており、寝具の素材の比較、形状、製法の検討、新製品の開発等、多くのメーカーの多様なニーズに対応してきています。

 これまでに、10回の睡眠環境講座およびフォーラムを開催し、多くの寝具性能コンサルタント及び睡眠環境コーディネーターを誕生させることが出来ました。一人でも多くの人が、寝具の性能試験、睡眠環境の調査、研究開発を行えるように研鑽を積んでいただくことを願っています。

 特に、寝具そのものだけでなく、寝室空間の建築構成部材、設備が大きく関係します。これらデザインを含め、健康で安全、安心できる睡眠観環境のために貢献していただけますよう望んでいます。

 初期の目標を達成するためには、日本睡眠環境学会の設立趣旨でもある「ふとんの性能評価と性能表示」の普及が重要であると確信して、睡眠環境講座、睡眠環境フォーラムを開催して、ふとんの性能試験等の試験を実施して参りました。ふとんの性能試験システムを活用することは、寝具業界の活性化の大きな力となります。

3) 睡眠環境研究機構の法人化

 今後は、研究者と寝具業界で協力して、寝具と睡眠の重要性を国や公的機関に認識頂き、国民の睡眠環境の質的向上と寝具業界の活性化のために睡眠環境の研究機関を充実させる施策を講じて頂けるように働き掛ける予定です。

 そこで、本格的に実施して行くために、睡眠環境研究所を寝具の性能を評価する共同利用の研究機関として「日本 睡眠環境研究機構」のNPO法人に発展させ、活動の母体とすることにしました。

2.睡眠環境研究機構の趣旨

1) 寝具の性能を評価し、消費者に最適な寝具を提供することによって、国民の生活の質的向上をはかる。

2) 寝具の開発、製造、販売の各段階に必要な学術と技術を普及し、寝具寝装品業界の活性化をはかる。

3) 一般消費者のニーズを把握し、良い眠りを得られるための睡眠と環境に関わる情報を消費者に提供する。

ことが目的ですが、研究者と寝具業界で協力する強力な体制を作り、寝具寝装品業界及び国民的な機関として強力に実施して行くことが必要です。

3.睡眠環境機構の業務内容

1) 寝具の性能、睡眠時の人体の生理と行動、寝室の環境に関する研究

2) 寝具の性能、寝室の環境の評価方法、評価基準、表示方法の確立

3) 寝具の性能試験の受託サービスと性能表示ラベルの発行

4) 睡眠実験、生理実験、寝姿勢と体圧分布測定による寝具の評価試験の受託サービス

5) 睡眠環境調査、居住環境調査等による寝室の評価試験の受託サービス

6) 睡眠環境講座、睡眠環境フォーラム、高度技術講座の開催、睡眠環境コーディネーター等の認定

7) )一般消費者に対する睡眠と寝具のアドバイスサービス、セミナー事業、インストラクター派遣事業

8) 睡眠と寝具に関する一般消費者のニーズの把握と情報の発信

9) 寝具の性能試験機、睡眠環境に関わる測定器、眠りに関する健康機器等の開発研究

10)消費者に最適な寝具を提供するための「高機能寝具研究会」、「寝姿勢測定器開発プロジェクト」等の開催

11)寝具寝装品の展示会、睡眠環境国際会議等の開催

12)上記に付随する事業

4.睡眠環境講座

 これまでに多くの寝具性能コンサルタント、睡眠環境コーディネーターを育成してきましたが、(1)睡眠の生理学、(2)寝具の性能、(3)睡眠環境 の全般に亘って「睡眠環境学」として体系的に把握して頂くことにしています。良い睡眠が得られるかどうかの課題には、寝具だけでなく、寝室の環境(温度、湿度、明るさ、騒音、空気質)を含めて、人体-寝具-環境のシステムとして総合的に把握することが重要です。

 本講座は、睡眠環境学として学問と技術を体系化して、「国民の生活の質の向上」 と 「寝具、インテリア、ホテル、旅館、住宅、福祉などの睡眠環境に関連する業界の活性化の基盤」 にすることを目的として、睡眠生理・寝具・環境の各分野の研究者、企業の実務担当者、そして、生活者、行政担当者に向けて、睡眠環境の全貌をよく理解して頂きたく企画しています。学会設立以来の各分野の専門の研究者に、ご協力頂いて開催するものです。

 寝具業界の活性化は、寝具に携わる研究者、企業の実務担当者が寝具に関わる学問と技術をマスターすることが基礎で、王道は他にありません。睡眠環境の学問と技術の全貌を展望できる「睡眠環境学の体系的なセミナー」は、おそらく本邦において初めての試みであると思われるので、奮ってご参加頂きますよう、ご案内申し上げます。

眠りの環境を把握することから始まり、寝具寝装品の物理化学的性能の認識、眠りのメカニズム、また、呼吸に関わる空気質、皮膚を介しての熱、湿度の問題、太陽の恵みと可視光線、材料としては、色、光、光沢度、反射率、音響振動の条件、物理的性質の測定と調整などの課題があります。寝具そのものだけでなく、寝室空間の建築構成部材、設備が大きく関係します。これらのデザインを含め、健康で安全、安心できる睡眠観環境を考えなければなりません。

 製品の開発に当たって、単に、製品等の性能評価を依頼するだけではなく、自ら開発試験を行うことが出来るシステムを考えています。新製品の発表段階に至るまでの開発の試行回数や工夫は大変な努力が必要と思います。開発者の技術レベルの向上を目的に、初歩から各種測定器の測定原理と操作メンテナンスおよび開発につながる技術の習得が期待できます。これまで、睡眠環境学会前会長が所長で運営されてきた「日本睡眠環境研究所」は、各種試験や教育に利用され、これらの維持管理は先生の努力の賜によるものです。これを、寝具の性能を評価する共同利用の研究機関として前述の「睡眠環境研究機構」の法人に発展させることにしました。学会設立の趣旨を達成のためにも重要なことと考え、法人化に際し、参加を募っております。

 睡眠環境の重要性が社会的にはやっと認知され始め、寝具の性能向上について開発が進んで参りました。さらに高レベルの知識を必要とする次世代の息吹も感じられます。

 睡眠環境研究機構のシステムが皆様のお役に立ち、技術者、研究者および開発スタッフが一人でも多く育つことを願ってやみません。より多くの人たちに眠りに関わる環境を適切に評価・選択できるハード・ソフトウエアーが充実できますように、皆様のご協力を賜りたく重ねてお願い申し上げます。

合掌

【プロフィール】

梶井宏修梶井宏修(かじい・ひろのぶ)

大阪生、近畿大学理工学部建築学科卒 専門:人間環境工学、睡眠環境 博士(工学)(建築温熱環境の要素測定機器と測定法に関する研究、大阪市立大学)人間環境工学研究室・睡眠覚醒時の熱環境と生理反応・熱放射の影響を受けない気温センサーの開発、アクティビティメーター小型放射計の開発、高速応答グローブ温度計の開発。空気調和が人体に与える影響 人と環境の24時間を考える、物理的環境要素の測定方法、熱放射率の測定方法。著書:「人間の許容限界ハンドブック」,居住スペース,pp.310-326, 朝倉書店(1991),「高齢者の生活と住宅熱環境」理工学社(1994)、など。趣味:オーディオ、写真、バードウォッチング、近畿大学理工学部建築学科准教授。

〒581-0811 大阪府八尾市新家8-23-1

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